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阪急神戸線・神戸市営地下鉄
相互乗り入れは、長田または板宿接続で
2017年10月下旬、神戸市長選で、阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互乗り入れの検討を公約に掲げていた久元喜造氏が再選を果たしたことで、相互乗り入れの本格検討が進められることになりました。

しかし、この構想は、巨額の事業費がかかる上、従来の利便性が失われることになる神戸三宮駅付近で両線を接続することを基本としており、その方針には大きな疑問が残ります。

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▲神戸の街によく馴染むマルーンカラーの阪急電車。81年前、地下線での開業を要請する神戸市と対立したが、阪急は高架線での開業を主張し続け、現在の姿となった(2014年8月撮影)。

2005年頃、阪急電鉄は、神戸線の神戸三宮駅付近を地下化し、神戸市営地下鉄西神・山手線と相互直通運転をする構想を神戸市に提案しました。当初、神戸市は、難色を示していましたが、近年は両者で話し合いが進められているようです。

神戸市が難色を示していた理由は、約1,000億円もの事業費の一部負担が求められること。また、地下鉄の運行系統が三宮駅で分断され、三宮−新神戸間の運行本数を削減せざるを得なくなること。さらには、三宮駅が直通となると、街のにぎわいに影響が出るのではないかという懸念がありました。

しかし、神戸市は今、人口減少に悩んでおり、西神ニュータウンと大阪を直結して利便性を向上させ、人口減少対策につなげたい考えです。一方、阪急は、西神ニュータウンの乗客を取り込んで神戸線の乗客増につなげたい考えで、利害が一致。本格検討が進められることになりました。

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▲神戸高速線の地下線から神戸三宮駅へと上る阪急梅田ゆき特急。

●阪急沿線から新開地方面が不便に
現在、阪急は特急を神戸高速線の新開地駅まで乗り入れ、山陽電鉄方面への列車に同一ホームで乗り換えられるようになっています。

戦後復興計画の中で生まれた神戸高速線は、阪急、阪神、山陽が同一レール上でつながるという大いに利便性を追求した画期的な路線です。新開地駅では、神戸電鉄とも改札内で乗り換えられるようになっています。

しかし、西神・山手線との相互乗り入れが実現すると、阪急は神戸高速線への乗り入れをやめ、神戸三宮−高速神戸間を廃止にする方針です。こちらよりも、西神ニュータウンのアクセスである西神・山手線との直通に一本化し、地下鉄の乗客を取り込みたいという思惑です。

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▲廃止される可能性がある神戸高速線花隈駅。

山陽電鉄は、神戸高速線を介し、阪神電鉄と相互乗り入れし直通特急を運行しているので、海側は阪神−山陽に任し、山側は、阪急−西神・山手線が担えば良いという考えのようです。

しかし、そのように分離してしまうと、京都や宝塚まで及ぶ阪急沿線から都心の高速神戸・新開地方面や山陽電鉄方面のアクセスが不便になってしまいます。西神方面から大阪へのアクセスは便利になりますが、阪急沿線の乗客にとって、西神方面へ直通することの重要さはあまり感じられません。それよりも神戸の都心を貫通している方が便利です。

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▲阪急電車から姫路方面への山陽電車に同一ホームで乗り換えができる神戸高速線新開地駅。

都心への直通がなくなると、阪急沿線の乗客が三宮以遠へ、例えば神戸ハーバーランドへ行くには、これまで直通する特急で高速神戸駅へ行けば良かったものが、梅田や三宮でJRか阪神に乗り換える必要が生じてしまいます。

どちらかと言えば、京阪神に一大ネットワークを持つ阪急と、神戸−姫路間の長大路線を持つ山陽が、神戸都心を横断する神戸高速鉄道を介してつながっていることの方が各拠点都市間の連携ができており、大事なのではないでしょうか。

●高速長田駅付近接続で最大限便利に
しかし、どちらかを選ばなければならないという必要はなさそうです。山陽−神戸高速−阪急の接続を維持したまま、西神・山手線との接続を実現することは可能です(2005年の記事にも記述)。

神戸高速線高速長田駅の西側では、西神・山手線と交差している箇所があり、ここに短絡線を造れば接続が可能です。何とも都合が良いことに、この角に公共施設(消防署と区役所)がありますので、地下権が利用しやすく、事業費も少なくて済みそうです。


これにより、現在、神戸高速線の新開地駅で折り返している阪急の運行区間を延長し、西神方面へ乗り入れさせることができます。また、西神・山手線から新開地駅、高速神戸駅へ出るのが便利になり、そこを経由して阪急だけでなく阪神方面へも便利になります。あわよくば、阪神への乗り入れも実現できます。

神戸高速線内においては、西神・山陽−阪急・阪神の各方面の乗り換えが同一ホームで行えるようになります。

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▲地下で神戸高速線と西神・山手線が交差する高速長田駅西側の交差点。ここに短絡線を造る案が考えられる。角地は偶然にも公共施設。(2014年8月撮影)

西神乗り入れ構想が考え出された当時は、阪急・阪神の経営統合前だったため、阪神方面へも便利になることは、都合が悪かったかも知れませんが、今はグループ会社ですので、構わないはずです。

三宮で接続する場合は、阪急を一駅手前の春日野道駅付近から地下化する必要があり、巨額の事業費が見込まれていますが、この短絡線なら最低限の事業費で済むはずです。最低限で済む上、より便利になるなら、こちらを選ばない手はありません。工期も短くて済み、早期に相互乗り入れが実現できるのではないでしょうか。

●板宿駅付近接続で運行時間短縮のメリットも
もう一箇所、さらに西方の板宿駅付近でも両線は交差していますが、ここは神戸高速線(運営会社は阪急系)を出て、山陽電鉄線内となりますので、権利関係が難しくなってしまいます。また、ここに短絡線を造ると、現在の板宿駅の位置では、駅に停車できなくなってしまいます。

ただ、神戸高速線の西端の西代駅から県道21号線の下を西へ直進し、西神・山手線板宿駅南側で接続すると、山陽電鉄に乗り入れることなく接続が可能で、板宿駅にも停車できます。この場合、高速長田駅付近より短絡線が長くなってしまうのですが、春日野道−神戸三宮間を地下化するよりかは、約半分の距離(約0.9km)で済みます。

また、板宿で接続の場合、西神・山手線がJR新長田駅へ迂回する手前の地点となるため、所要時間の短縮が図れる上、阪急側の肩を持てば、JRにお客が逃げる前に取り込むことができるというメリットがあります。


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▲地下に西神・山手線が通る太田町交差点(板宿駅南側)。ここに西代駅から延びる短絡線を接続する案が考えられる。(2014年8月撮影)

これら短絡線の場合、阪急神戸三宮駅は高架駅のまま残すことができ、車窓に神戸の街並みを現在と同様に見ることができます。その視覚効果により、神戸三宮の街をPRすることができ、降りてみたいという印象を与えられます。それにより、神戸市が懸念していたにぎわいの目減りの懸念が払拭できるのではないでしょうか。

また、三宮で接続の場合、手狭な西神・山手線三宮駅に折り返し線の整備が困難で、新神戸(谷上)−三宮間の列車の処理に困るところでしたが、長田や板宿短絡線の場合、基本的な運行系統を新神戸−名谷と阪急梅田−西神中央(特急)とすればうまくいくでしょう。

名谷駅は2面4線あるので、同一ホームで乗り換えることができます。また、折り返し線も備えていますので、新たに整備する必要がありません。

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▲2面4線の設備を持つ西神・山手線名谷駅。ここで、新神戸からの普通列車と阪急梅田からの特急列車を連絡する案が考えられる。

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▲名谷駅には、車庫への入庫線を兼ねた折り返し線も備えている。

●三宮開発で収益を上げたい阪急
阪急が三宮での地下鉄接続にこだわるのは、線路跡地を開発して収益を上げたいからなのでしょう。現在、神戸三宮駅の新駅ビル(高さ120m)の建設が始まっていますが、それは、線路にかからない部分での建設になっています。

それに加え、線路を地下化して駅跡部分にも高層ビルを建てると、より収益を上げることができます。表向き、「三宮の活性化」と表現していますが、収益を上げたいという思惑が見え隠れしています。

約1,000億円の事業費のうち、3分の2は税金が投入されます。短絡線の例のように最低限の事業費で行える箇所があるにも関わらず、阪急の商売の都合により、多額の税金を使って事業を行われるということがあって良いのでしょうか。

ホーム幅が狭い春日野道駅を広い地下駅とすることで安全性向上が図れるとしていますが、それは現在の駅にホームドアを設置することで対処できることでしょう。

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▲阪急神戸三宮駅に隣接して建設工事が進む神戸阪急ビル東館。

近頃は、春日野道駅よりさらに一駅手前の王子公園駅付近から地下化して、よりたくさん商業用地を捻出したいという考えも出し始めています。しかし、無理に鉄道用地から捻出しなくても、周辺に多い雑居ビルなど買収して、再開発することも阪急ならばできることでしょう。

そんな阪急の都合により、鉄道ネットワークが左右され、利便性が最大限に発揮できないということには、なってほしくありません。

また、三宮では、JR三ノ宮駅ビルの建て替えや駅南東地区での高層ツインタワーの建設なども計画されており、これ以上開発すると、オーバーストア(供給過剰)状態になる懸念もあるのではないでしょうか。

神戸市長や担当部局には、しっかり計画内容の精査を、そして、市議会にも、しっかりチェックしていただき、より多くの利用者が納得できる方策を導き出していただきたいと思うところです。

※近頃の一部報道では、三宮接続案の他、新神戸、長田、板宿接続案も検討されていると報じられています。
2018.11.19  
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